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3回教区音楽祭「講演と賛美の集い」開催

 

 第3回教区音楽祭は、2012218日(土)午後1230分から阿佐ヶ谷教会で開催されました。

 第1部は、巣鴨教会牧師の渡辺善忠牧師により、「礼拝と音楽」〜讃美歌、聖歌隊、奏楽の役割〜による講演をいただきました。渡辺善忠牧師は、東京芸術大学を卒業後に東京神学大学博士課程を修了されました。その後、ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・ミュージックに留学、オルガン、指揮法などを研鑽され、多くの宗教音楽の合唱団の指導をされるなどキリスト教音楽での著名な指導者です。


第1部 講演 「礼拝と教会音楽」〜讃美歌、聖歌隊、奏楽の役割〜

 教会音楽の基本的な意味は、神の救いの御業への感謝であり、神様への感謝の応答として歌われるものです。また、神の救いの御業を述べ伝えること、伝道や証です。 讃美歌は説教と同じくらい大切で、その日の説教は午後には忘れても、讃美歌は信仰者を支え続ける力を持っています。


礼拝音楽と讃美歌 


讃美歌は神の御業を伝える役割を担う

 礼拝音楽の歴史を辿ると、讃美歌は神の御業を伝える歌です。旧約聖書で最初に歌われたものとしては、出エジプト記15章のモーセ、ミリアムの歌が挙げられます。モーセがイスラエルの民を引き連れてエジプトから脱出し、神の助けでファラオの軍勢から逃れて葦の海を渡った後に、壮大な神への感謝の歌が歌われます。2節では、「主はわたしの力、わたしの歌 主はわたしの救いとなってくださった。この方こそわたしの神、わたしは彼をたたえる。わたしの父の神、私は彼をあがめる。」と歌い、18節まで、葦の海でのイスラエルの民への神の救いと、エジプト軍の敗退を歌い上げています。また20節からは、アロンの姉のミリアムが、「主に向かって歌え、主は大いなる威光を現し、馬と乗り手を海に投げ込まれた。」と歌っていますが、これの方が古い歌であると言われています。

詩編1067~12節もこの葦の海の奇跡を歌い上げています。また、モーセ五書は古代の人々によって朗唱されていたと言われています。

 イスラエルの王や民による不信仰と裏切りに満ちた歴史によりイスラエルは滅亡しました。旧約時代の讃美歌の次の代表としては、紀元前6世紀のバビロンの捕囚の出来事を通して、イザヤ書40章のイスラエルへの帰還の約束、創造と贖いの神を歌い上げる壮大な賛歌や、53章の「苦難の僕」の中にある主の復活の預言の歌や、メシヤ待望の賛歌などが歌い続けられました。

 新約聖書には、主イエスの十字架の死と復活を預言する歌が収められています。フィリピの信徒への手紙第26~12節は、初代教会の代表的な讃美歌で、6−8節には「キリストは神の身分でありながら、神と等しい者であることの固執しようとは思わず、かえって自分を無にして、僕の身分になり、人間と同じ者となられた。人間の姿で現れ、へりくだって、死に至るまで、その十字架の死に至るまで従順でした。」と歌っています。また、初代教会では、詩編16編や1034節が、主の復活を預言する讃美歌として歌われていました。


讃美歌は礼拝を築く「柱」である

 紀元4世紀には、礼拝(ミサ)の形が整えられました。ミサの歌詞は新約聖書から取られています。アウグスチヌスの礼拝では、先ず会衆が詩編歌を歌った後にその詩編の説教がなされていました。

 ミサの形は、カトリックでは、Kyrie,Gloria,Credo,Sanctus,

Agnus Deiであり、プロテスタントでは、(特にルター派)招きの言葉、頌栄、信仰告白・聖書・説教、聖餐、祝福と派遣となり、カトリックと対応する部分もあります。

Kyrieはマタイ1715節の「主よ息子を憐んで下さい」、Gloriaは「いと高きところには栄光、神にあれ」(ルカ214節)、Credoは「ニケア信条」、Sanctus(聖餐感謝)、Agnus Dei(神の子羊)です。


聖歌隊と奏楽を担う私たちの課題
として、次のことを考えておくべきです。

 讃美歌と奏楽は礼拝を築く柱です。これは、その日の聖書の御言葉を伝えるために用いられます。

讃美歌の選曲は、先にのべた讃美歌の歴史的な視点を土台にして選ばれなければなりません。

奏楽者は、奉仕する日の聖書テキストを読んで、讃美歌の奏楽を準備した後に前奏・後奏などの奏楽曲を準備するべきでしょう。

会衆と聖歌隊の役割はどうでしょうか。礼拝の連なる全ての人々は、礼拝を創造する器として用いられなければなりません。礼拝で初めて用いられる難しい讃美歌については事前に讃美歌練習を行うべきでしょう。また、週報には次週の讃美歌を載せて礼拝に備えるべきです。

 聖歌隊の最も大切な働きは、礼拝の讃美歌を支えることです。聖歌隊は、常に讃美歌をリードする責任があります。曲目については当日の聖書に従い決めるべきです。独りよがりの「合唱団」にならないようにしましょう。また、答唱詩編やアーメンを歌うことをお勧めします。


コンサートの企画・立案

 教会の敷居を低くするために奏楽者や聖歌隊によるコンサートなどを行い一般の人に教会へ来ていただくことをお勧めします。多くの人々に教会を知っていただくため、牧師の挨拶、教会案内の配布、教会行事のチラシなどを渡すなど工夫をして下さい。単なる「発表会」にならないようにすべきです。

 

第2部 音楽祭

今回は、参加団体が13教会17団体になり、昨年に比べて5教会6団体の増加でした。隔年に参加される教会や初参加の教会が増えて主催者としてはうれしい悲鳴になりました。

また、今回北海教区との宣教協力に基づく参加があり、興部教会と中標津教会が参加し、アッピールと地元産のチーズ等の物産販売が加わりました。このため開始時間を30分早めて、事前に出入りの確認を行って会をスムーズに進行させる工夫をして音楽祭に臨みました。

 初参加は、高井戸教会、日野台教会、西国分寺教会と桜美林大学クワイヤーでした。それぞれの聖歌隊等は、新作の讃美歌や教会の伝統を反映した曲目を携えて参加された聖歌隊等もありました。境南教会は、聖歌隊、リコーダー部とトーンチャイムが参加しました。トーンチャイムは、ハンドベルと同属の楽器のようですがすがすがしい音楽が会場に流れました。阿佐ヶ谷教会は、小山章三先生が今回は特に東日本大震災を覚えて作曲されたハミングの「祈り」と、毎年作られる教会標語の歌が演奏しました。東京府中教会は、今年もフルート独奏での参加でしたが聖歌隊による参加を検討しているとのことでした。昨年に引き続き参加した野方町教会は、指揮者自作の「神を讃美せよ」(詩編150編)を歌い、聴衆と共に「神を賛美せよ」と繰り返して賛美を締めくくりました。いつも出演してくれる原町田教会ジュニア聖歌隊は、ピアノ、ギターとパーカッションの伴奏で新しい讃美歌を歌って会場を盛り上げました。昨年に続いて参加された井草教会は、多数の会員が92歳のバイオリニストの小島亮一兄と共に参加しました。小島兄は、「やすかれ 我が心よ」(賛美歌21−532)を独奏され感動を与えてくれました。初参加の桜美林大学クワイヤーはえんじ色のガウンを纏い、J.ラターの「I will sing with the spirit」(一コリント14−15)という賛歌などを演奏し美しいハーモニーを奏でて会場に新鮮な空間を作ってくれました。次回から教区内のキリスト教主義の学校の聖歌隊等が多数加わってくれることが望まれます。

最後に、吉岡光人牧師が率いる教職・信徒混成合唱団が、「静かに眠るわが友よ」(アイルランド民謡のロンドンデリー・エアーによる)を演奏して音楽祭を締めくくりました。

 今回の音楽祭には、49教会等から414名の聖歌隊員と聴衆が集まり満堂の中での開催でした。

 当日捧げられました献金は、引退牧師と配偶者のための「にじのいえ信愛荘」と「東日本大震災救援基金」に捧げられました。

 当日いただいたアンケートの結果では、音楽祭の内容で90%以上の方々から良い評価をいただきました。また、会の形式についても「講演と賛美」の形が多くの方々から支持をいただきました。

この結果を受けて、次回も2月の第3土曜日に礼拝宣教研究委員会と合同で「第4回教区音楽祭〜講演と賛美の集い〜」を計画することにしますのでご期待下さい。
(文責:壮年委員会 玉澤武之)